ファストキャストよりなお速く

ちょっとしたご縁で、とある白魔道士がしたためたという、強力な魔道書のレプリカを閲覧させていただく機会に恵まれました。

魔道書、と書くと魔法を修得するためのスクロールの類と混同されてしまう方もいるかと思われますが、魔法スクロールというのは特殊な手続きによって書き記され、魂に直接魔法を焼き込む呪いを織り込んだ代物で、その後の魔法の扱い方には関与しません。
これに対し、僕が今回閲覧させていただいたものは、僕たちに新たな魔法を教授するという類のものではなく、術者が使える魔法を、装備品とは違ったアプローチから強化する、というもの。
味方にかける魔法に特化しながらも、より速く、より確実に、より正確に魔法を行使する、という考え方に基づき構築された、一種の補助装置のような代物でした。

"より速く、魔法を行使する"
これは僕たち赤魔道士の領分であり、ファストキャストという能力によって顕著に表されています。ですが、ある考え方に基づいて魔法を行使するプロセスを四つに分けたとき、ファストキャストによって短縮される手続きはその中のたった一区分にすぎないのです。

世の中にあまた存在する、魔法スクロール、呪譜、忍の巻物、それからえーと…精霊契約書に、神獣や霊獣との契約そのもの。
これらによって魂に焼き込まれた技の全ては、魂の中でいわゆる擬似的な書庫、あるいは目録のようなものを形成する、という考え方があります。
その目録の中から、i)使いたい魔法を探し、ii)選んで取り出し、iii)行使する目標を定め、iv)詠唱を開始する。そして発動。ことほどさように、ファストキャストはキャストであるからして、iv)のプロセスでしか魔法を行使するまでの過程に影響を及ぼすことはできません。

では、もっと速く魔法を行使したいならばどうするか。

i)~iii)を滞りなく行えばいい。

誰でもわかる答えであり、そのためのマクロと呼ばれる技術、それを用いた略式詠唱も冒険者たちの間に浸透してもはや久しいのは周知のとおり。
目録から検索する手続きをすっとばして、いきなり目的の魔法を持ってくる。それによって複数の魔法を流れるように紡ぎ出し、あるいはそれぞれの技や魔法の効果をより強く増幅するための変換術式を組み込みながら。
便利な技術ですが、これらにもまた限界はあったのです。
優先的に目録から引っ張ってきますよ、と登録できる魔法や技の数にも限りがあり、数多くの魔法を駆使して味方を補助する、あるいは敵を薙ぎ払う魔道士達は、この限界に悩み苦しみました。

その末に見出された、マクロに頼らず魔法を目録から呼び出す技術。

魂に焼き込まれた魔法のひとつひとつ、全てに自分だけの言葉を定義づけ、言葉をもって目録検索を介さずに魔法の対象を定める段階、あるいは詠唱が可能な段階までもってくる。
使うためには自らこの魔法と言葉について書き上げていかなければならないという制約が付き纏いますが、その効果は確かなものです。

話は冒頭に戻りますが、この魔道書のレプリカも、そんな風にして書き上げられた"個人用辞書"のひとつだというのです。
普通は自分だけで使うものだから、世の中にはめったに出回らない代物なのですが…
"最速白魔"、そう銘打たれた装丁もへったくれもあったものではない紙の束を一枚めくったとき、僕は思わずため息を零しました。
その美しさに、です。

パーティ・アライアンスを組んでさえいれば、どこにいようとも、どんな立ち位置で戦っていようとも、疾くその傷を癒し、あらゆる災禍を取り除く、我こそは最速の白魔道士たれ。
そんなひたむきな願いと決意の元、ひたすらに書き連ねられた言葉の列に、深い畏敬の念を覚え、またこの言葉の全てを操る資質をほんの少しうらやましく思いました。

僕自身はこの全てを使いこなすことはできない、そういう側に立っています。
けれど、僕の操る辞書にも取り入れるべき要素は多くあり、この書との出会いは僕にとって必ずしも無駄ではなかったと思います。
この書の筆者と、閲覧許可を下さった目の院の司書さんと、縁を繰り引き合わせてくださった女神に、深き感謝を。

まだ閲覧できるといいのですが…。ほかの方にも是非見てほしいです。
こちらからどうぞ。閲覧終了してしまったようです…。

追記:去年の星芒祭の頃に公開されたものなので、二月の下旬頃までは公開できるんじゃないですかね? との言葉を頂きました。
アバウトだなぁ…。

追記2:自己解釈を交えて、こういったものを編纂してみました。
いかがでしょうか。

追記3:ついに原典の編者様が腰を上げてくださいまして、オリジナル改訂版が発表されました。
皆様も、自分のための辞書を、編纂してみてはいかがでしょうか!

編者注:こぼれ話から特設エントリにて解説させていただきます
/salute for 「上手な白・下手な白」スレ643◆utlQEF8DIs 様 改め 林先生さま

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by Rdms_pride | 2007-01-12 12:41 | よしなしごと


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